推しが出たので『醉いどれ天使』を観てきたよ

『醉いどれ天使』

出演:桐谷健太 高橋克典 佐々木希 田畑智子 篠田麻里子/髙嶋政宏 ほか

原作:黒澤明 植草圭之助

脚本:蓬莱竜太

演出:三池崇史

 

に隠れ、朝を恐れ、昼を恥じて、ただ、息をするー

 

「こんな風にしか生きられない」という遣る瀬無さや虚しさは私にも覚えがある。最善でないとは理解していても、そんな風にしか生きられないのだ。未来のことを考えるよりもまずその日をやり過ごすためにはそうするしかなくて。

この物語の舞台である戦後間もない頃とは違って、今の私たちは努力次第でたくさんの選択肢や可能性がある。それでもそんな風に感じることはある。選択肢は無限大に見えて実質一択でしかないことだって多い。それしか選ぶことができない自分の無力さを感じながら、虚しさを抱きながら、それでもただ息をして生きるしかない。華やかな暮らしをしているように見える人も、楽しそうにしている人も、みんな「そうするしかなくて」そこに居て、それぞれの地獄を抱えながら生きている。

人の本質的な部分を描いた作品というのは、時代や性別や環境の違いなども超えてしっかり伝わるものなのだと実感しました。

 

出演者の方のお芝居もとても素晴らしかったです。特に女性陣の出演者が印象に残りました。

田畑智子さんは少しの声色の違いですごくセリフに表情が出るというか。慎ましい雰囲気の中にも芯がある女性の強さや逞しさも感じて、すごく存在感のある女優さんでした。今回の舞台で一番印象に残った演者さんです。

佐々木希さんに関してはお芝居のお仕事をしている印象もなくて、失礼ながら「旦那さんが問題を起こして以降、見る機会増えたなぁ(お察し)」の一環と言いますか、舞台で見ても「あ!佐々木希だ!可愛い!」って感じなのかなと思っていたのです。実際びっくりする程可愛いのは本当ですが、舞台では「可愛い佐々木希」に引っ張られず完全に「ぎん(役名)」でした。全てを糧にしているかのような味のある演技だったし、涙するシーンでは大粒の涙がボロボロ溢れて、こんな風にお芝居をする人だったんだ…!と、「佐々木希を生で見れるの楽しみ」みたいな軽い気持ちでいた自分を恥じたほどです。

麻里子様に関しては以前主演の舞台『アンフェアな月』でも観たことがあって、その時はドラマの『アンフェア』だと篠原涼子さんが演じていた雪平夏見役を彼女が演じていたんです。その時の印象が「この滑舌で舞台主演は何故なのか…舞台向いてないよね…?」という感じで、AKB時代の舌ったらずな感じそのままで雪平役だったので正直苦笑モノだったんですね。でも今回はすごく聞き取りやすくて素敵な悪女っぷりでした。その変化がすごく嬉しかったです。

 

あの黒澤監督の作品を有名な映画監督の三池さんが演出されて錚々たる芸能人が出演して大々的にテレビで宣伝して…というだけあって、大道具なども素晴らしかったし衣装も映画版と同じデザインだったり生バンドで音楽が入ったりと、何もかもが豪華で観ているだけで楽しめる舞台でした。

 

普段あまり舞台の感想ブログとか書かないんだけど、今回はなんとなく記事にしてみました。ちなみにこれに出演していた私の推しというのは染谷俊之さんです。