「既読」と「未読」に囚われる人間関係

最近、友人関係においてLINEの「既読」という機能に囚われすぎてもはや意味不明…と思うことが多い。

 

20代前半の若い友人の口からよく聞く「既読無視」という言葉。

既読になっているのにすぐに返信をしないことをそう呼ぶらしく、これは友人関係においてはタブーでもあるらしい。彼女曰く「既読無視はよくないから、すぐに返信できない時には返信できるタイミングまで既読をつけずに未読のままにしておく」という気遣いをして既読無視を防ぐそうだ。私が中高生の頃はLINEではなくメールだったけれど、やはり一部では「チャット状態で早く返信しないとだめ」みたいな風潮はあったし、「既読無視」も多分そういう中で生まれた言葉なんだと思う。何かしら用件があって連絡をとることが多い大人に比べて、若い子たちのやりとりは雑談を主としているからこその文化なのだろう。

「既読無視は良くないから〜」というその言葉の通り、彼女に連絡をしても長時間(丸1日以上のことも)メッセージが既読にならない時がたまにある。数時間であれば「忙しいのかな」と思うけれど、あまりにも長いこと既読にならないと「敢えて開かずにいる」ということがこちらにもわかる。しかし私は雑談したくてLINEを送っているのではなく、伝えなければならない用件があって連絡しているわけで。とりあえず目を通してくれないかな?と未読のままのトーク画面を見て困惑する。特にそれが期日のある内容である際には「既読無視」より未読無視のほうが困ってしまう。ちゃんと期日までに用件を把握してくれるだろうか…と不安になる。ずいぶん時間が経ってから丁寧な返信がくると、既読スルーを避ける気遣いをドウモアリガトネ…と思いつつも、なんとなくもやもやする。

 

また別の友人は、LINEの通知画面を私に見せながら「こいつ面倒だから既読をつけてないんだ~(笑)」と何故かちょっと上から目線で誇らしげに言った。先に挙げた友人のように「既読無視はよくないから未読スルーをする」とは意味合いが違い、この友人は悪意をもって「未読スルー」をしている。しかし、結局やっていることは同じだ。本当に読まずに無視をする気があるならそもそもブロックをすれば良いし、メッセージを読んだ上で無視をしたいなら既読無視をすればいい。しかし彼女はそれをせず、未読のまま放置するその少しの間に「敢えて既読を”つけない”」という時間を過ごすことで「無視してやってる」と自分が優位にたって関係をコントロールしているような気分に浸る。それに満足したら「ごめんLINE気づかなかった!」だとか平然と返信したり、当たり障りないスタンプを返したりしている。つまり行動としては「気遣いとして」の未読スルーと同じこと。ちょっと優位な気分に浸りつつも結局は「既読無視」という行為を避けることによって関係の悪化を避けようとしているのだ。

 

そもそもLINEなどのメッセージアプリで「既読」という表示がなぜされているのかというと、これは文字の通り受信側からすれば「読みました」ということが返信をせずとも相手に伝えられ、送信側からすれば「読まれた」ということが認識できるため。例えるならば、回覧板のチェック表に自動でチェックをしてくれるような機能。すなわち「既読」になっている時点で「読みました」という取り急ぎの返事をしているのと同じことであり、その時点で実質「無視」はしていないことになる。つまりこれは「すぐに返信しなくても良いように」搭載されている機能であり、この「既読無視」という考え方はその機能を無視したなんとも本末転倒な発想だ。

勿論「既読」の表示だけでやりとりを済ませるのは基本的に不十分で、「承知した」という旨だけでも返信するほうがベターだし、質問に対する回答や意思表示をしなければならない場合など返信を要するメッセージは多くある。しかし、メッセージを読む時間があったからと言ってそのタイミングで返す余裕まであるとは限らない。内容だけでも先に把握しておくことは、余裕ができたときに返答するためにも効率がいい。だから返信できないタイミングだったとしても読めるときに読むべきだし、送信者もすぐに返信がなくとも既読表示があるならば「ひとまず読まれたようだ」とだけ認識すればいい。「既読」には「メッセージを開きました」以上の意味も以下の意味もない。返信を急ぐ場合はその旨を伝えればいいし、そうでないなら相手が返信できるタイミングを待てばいい。「明日あいてる?」の返答が何日経っても来ないなど、明らかに「もう今更返信が来ても意味ない」という時にはじめて、本当の意味で「無視」という状態になるのだと思う。

 

「既読」という表示は「読んだら自動的につく」「読まなければつかない」ただそれだけで、メッセージを「読んだか否か」というだけのこと。だから既読を「つける」「つけない」なんていう「既読」主体の物言い自体に違和感があるし、彼女らがどれだけ「既読」という表示に囚われているかが伺いしれる。この二文字の表示で人間関係をコントロールしようとしているし、されている。だけどそんな二文字にそこまで人間関係を左右されるの、怖くないですか?「読んだら即返信をしなければならない」って、あらゆる場合を想像する力が乏しすぎません?「既読になってるからそのうち返答をくれる」「返信こないけど既読になったから把握してくれる」「この子は返信遅めだけど絶対に返信はしてくれる」と思い合えるような信頼関係を築いた方がスムーズじゃないですか?

 

年齢を重ねるにつれて、連絡は「おしゃべりをするためのもの」から「必要なことを伝えるためのもの」という風に変化していくと思う。そう言った中で「未読スルー」というのは大変迷惑なこと。連絡事項を文面で伝える時点で「即反応」は求めていない(というか求めてはいけない)けれど、そこまで長時間読まれないことも想定されていない。返信のタイミングは期日などない限り自由にすればいいけれど、ひとまず読めるときに読む癖をつけた方がいいと思う。「既読スルーを避けるための未読スルー」、反対。