近頃のインターネット広告よ。

私は芸能人や人気インスタグラマー・ブロガー・youtuberなど、いわゆる"インフルエンサー"と言われる人達が発信するファッションや美容系の情報を見るのが好きだ。しかし最近、それらについて思うことがある。

彼女たちが「ここ行ってきたよ♪」「~get!」「~プレゼントしていただきました」と、同時期に同じコスメや同じ美容クリニックやサロンやファッション小物を紹介しているのをよく見かける。あれらは見ての通り、企業からインフルエンサーに無料で提供されているものを紹介している広告活動。彼女たちはお仕事として商品やサービスを紹介している。(※ギャラがある場合や、無料で提供する代わりに紹介してもらうお約束だったり、またはあくまでただの「プレゼント(SNSで紹介してほしいな…チラッ)」ということだったり、色々なケースがあるとは思うけど…どの場合も基本的には"お仕事"というスタンスだと捉えていいと思う。)

私はそれが、そのインフルエンサーが発信するコンテンツの魅力を低下させると共に、その宣伝された物や会社の価値も落としていると思う。

 

なぜ上記のような広告活動がコンテンツの魅力を低下させるかというと、企業タイアップのレビューが増えると、コンテンツ内でのプライベート感が減り、発言の信憑性も下がるのだ。

そもそも、なぜインフルエンサーインフルエンサーになるのかというと、「この人の愛用品や行きつけのお店が知りたい」「この人が選ぶコスメがすき」「この人のファッションを参考にしたい」などと多くの人に思われるからだ。そしてそれは、彼女ら個人のセンスにより商品やお店の情報が発信されていることが前提である。芸能人のSNSも同様で、「番組や雑誌で見せる顔よりもプライベート感がある」情報、つまり同じく個人的な発信であることが魅力なのだ。受け手は、彼女らが自ら選び購入している商品やサービスやそれに対する率直なレビューに興味を持っている。それが企業タイアップが増えることによって、企業に依頼された(=彼女たちのセンスで選んだものではない)物の紹介が増えると、そのコンテンツの魅力は半減である。

また、タイアップ投稿の場合、それらが用意された宣伝文句を言わされているにしろ、自分の言葉でレビューするにしろ、お仕事なので実際の使用感はどうあれ一応褒める。正直なところ「これ使えないわ」と思っていても一応褒めるのだ。まあその辺は「これはタイアップ投稿だからな」ということを念頭に置いてみるからいいとして、そうすると、タイアップではない個人的な愛用品紹介をしても「これもPRだったりするのかな」という気がしてきて、その人の発言全体の信憑性が低下してくる。

 こうして、本来のコンテンツの魅力はどんどん失われてしまう。

 

そして、この広告の方法がコンテンツの魅力だけでなく商品やブランド自体の価値を落とすと私が思う理由は、受け手はその企業や商品に対して「有名人に無料でバラまいている」「ステマをしている」「有名人を特別待遇している」というような印象を抱くようになるから。

特に高価な商品やサービスは「高いから効きそう」「普段は手が出せない憧れのブランド」など、商品そのものの効果の他に様々なプラシーボ効果が重なってやっと価格相応の効果を感じられるものだったりする。それが芸能人やインフルエンサーに無料でバラまかれ、あちこちで「いただきました♪」なんて言って商品を紹介され、企業が彼女らをあれこれ接待している様子が目に入ってくると、「またこの人たちにバラまいて宣伝させてるのか…」という気持ちになり、ブランドとしての品格などが損なわれ、プラシーボ効果が半減してしまう。SKⅡとかそれが顕著だけど(笑)特に、その待遇を受けているのがブランドイメージに合うような特定の有名人数名だけ等ならともかく、youtuberやインスタグラマーなどの受け手側からすると"一般人"やそれに等しいと認識されているインフルエンサー(実質、一般人とも言えなくなってきたのが現状だけど…)にまであちこちバラまいていると、尚更付加価値が半減されてしまう。

また、このような宣伝の仕方は、所謂"CM出演"のようなことと違い、インフルエンサー本人がプライベートですすめているような印象を与えられることで宣伝の効果をより得ていると思う。このようなやり方は一昔前はそれこそ詐欺のごとく「これ愛用してます♪」みたいな書き方をしてプライベートで購入したことを装って宣伝していた所謂"ステマ"が始まりでしょうし。ペニオク問題以降は一応「PR記事」とわかるようになんらかの記載をするのが主流になり"ステマ"という枠からは逃れているけれど、一般層からみた印象としてはこれらはステマと同じだし、情弱なら「PR投稿」「提供」などの持つ意味合いがわからず「愛用してるんだ!」と真に受けてしまう人もいると思う。こういうやり方って、情報弱者の足元を見ていると思う。私個人としては、このようなやり方は例え実際に良い商品だったとしても「ここの商品あちこちでステマしてるし、どうなの?」と、あまり好ましくない印象を持つし、商品や企業の信頼感も薄れてしまうのだ。

 それに、芸能人が「美容クリニック行ってきたよ♪」「脱毛サロン行ったよ!」と紹介しているところだって、実際は料金もそこそこするし予約もなかなかとりにくい。芸能人のように「仕事の合間に気軽に♪」なんて到底無理で、予約をとろうとしてもびっくりするくらい先まで予約が埋まっていたりする。芸能人やインフルエンサー達が特別待遇で予約がとられて無料でサービスを提供されているであろうことを考えると、必死に予約を取って高額を支払うのが馬鹿らしくなる。「有名人多数ご来店・ご愛用」なんてうたわれても「そりゃあ、バラまいてるんだからそうでしょうね。」「こっちは高いお金払って大行列に並ぶんですけど…この芸能人たち絶対並んでないよね…?なんで気軽にオススメとか言ってるの…?」と思えてくる。こうなると、一般客を大切にするよりも有名人に媚びることに力を入れている、一般客(特に情弱)の足元を見る企業という印象を抱いてしまう。

 

インフルエンサーに「お金儲けをするな」と言いたいわけではない。多くの人に有益な情報を発信しているのであれば収入があるのも妥当だと思う。だから推奨する商品をアフィリエイトのリンクを貼るのは大いに結構だし、記事や動画内に広告(と明確にわかるもの)が挟まれることにも異論はない。

また、企業側に、彼女らを使っての広告活動をするなと言いたいわけでもない。この時代にインフルエンサーSNSで人気の芸能人を使うのは時代に合ったやり方だと言える。CMに何人もの有名人を出演させるよりも、低コストで効果的な賢い方法なのかもしれない。しかし、これにはいくつかの改善が必要だと思う。例えば「バラまいている」という印象を避けるために少数先鋭にしぼること。価格帯が高いハイブランドや高級コスメなどは特にそれを考えてから人をよく選んで配った方がいい。また、それが企業発信の広告であり彼女らが自ら発信するコンテンツとは違うということを、情弱でもわかるようにもっと明確に示すことも、企業の誠実さを示すという点で重要だと思う。せっかくのブランド価値が「ステマしてる」という印象によって下がらないように。

テレビやラジオで流れるCMだって、番組とCMははっきりと分かれている。ネット上のホームページにある広告だって、広告は広告だとわかるように表示されるのが通常だ。しかし芸能人やインフルエンサーを使ったステマまがいの広告は、例えるならばスマホ用のサイトでスワイプと同時に動いて誤タップさせるような不快な広告や、「>>次のページを見る<<」などとコンテンツ内の一部を装ってリンクをタップさせるようなスパム広告と同じような印象を受ける。ネット上でのあらゆる広告活動はこれからも少しずつ形を変えていくのだろうけど、今あふれている、企業と発信者たちが双方の価値を落としていくこのスタイルが早く廃れていくことを願う。